「借金は早く返すべき」という常識。特に住宅ローンという大きな負債を抱えていると、ふとした瞬間に「繰り上げ返済して楽になりたい」という衝動に駆られることがあります。 しかし、自由を最大化しようとする時、その「返済」が逆にあなたの足を止めてしまうかもしれません。現在、住宅ローンを残している私が、完済予定まで「あえて返し続けない」と決めた理由を、数字と戦略の視点から紐解きます。
1. 数字で見る「1.0% vs 5.0%」の圧倒的な差
繰り上げ返済を検討する際、最初に見るべきは「お金のレンタル料」と「お金の稼ぎ」の差です。
計算を分かりやすくするため、私のローンの金利を約1.0%、投資の期待利回りを5.0%(全世界株式の長期平均など)として比較してみましょう。
もし手元に100万円の余剰資金があった場合、使い道によってこれだけの差が生まれます。
| 選択肢 | 計算式 | 1年後の結果 |
| ① 繰り上げ返済する | 100万 × 1.0% | 1万円 の利息を節約 |
| ② 投資に回す | 100万 × 5.0% | 5万円 の運用益(期待値) |
その差は、年間で4万円。
「たった4万円か」と思うかもしれません。しかし、私の住宅ローン残高は約2,300万円です。もしこの全額を「返済」ではなく「運用」に回し続けた場合、理論上のスプレッド(利回り差)は年間で約92万円にも達します。
- 返済すると: 借金がゼロになり、月々の支払いがなくなる。
- 運用すると: 借金は残るが、それを上回るスピードで資産が増えていく。
この4.0%という「差分」こそが、私がリスクを取ってでも手元に資金を残し、自由を加速させるための原動力です。めの原動力です。借金をあえて残し、その分を運用に回すことで、資産の成長スピードを最大化しています。
2. 「現金」という名の最強のオプションを捨てない
繰り上げ返済の最大のデメリットは、「一度払ったお金は二度と手元に戻ってこない」ことです。
- 住宅ローン: 銀行にお金を渡した瞬間、その100万円は「銀行の所有物」になり、あなたの流動性は失われます。
- 投資資産: 株式や投資信託として持っていれば、急なライフスタイルの変化や、法人の修繕費が必要になった際に、いつでも現金化して対応できます。
「いつでも返せるが、今はあえて返さない」という状態。これこそが、人生設計において最も心理的余裕をもたらす「攻めの待機状態」だと考えています。
3. 団体信用生命保険(団信)という「無料の保険」の価値
住宅ローンには多くの場合、団体信用生命保険(団信)が付帯しています。これは、債務者に万が一のことがあった際、ローンの残高がゼロになる仕組みです。
2,300万円のローンがあるということは、裏を返せば「2,300万円分の生命保険」に入っているのと同じ状態です。 繰り上げ返済をしてこの残高を減らすことは、自ら保険の保障額を削っている行為でもあります。特に家族がいる場合や、法人を運営している身としては、この「負債が消える」というセーフティネットを維持するメリットは無視できません。
4. インフレは「借金」の味方である
現在のようなインフレ局面では、お金の価値が下がり、相対的に「借金の価値」も目減りします。
2050年に支払う8.5万円は、30年後の物価上昇を考慮すれば、現在の8.5万円よりもずっと「軽い」金額になっている可能性が高いでしょう。一方で、投資している資産(株式や不動産)はインフレに強い性質を持っています。 「価値が下がる負債」をゆっくり返し、「価値が上がる資産」を太らせる。これがインフレ時代を生き抜く基本戦略です。
5. 天秤の合わせ方:結局は「夜、ぐっすり眠れるか」
どれだけ数字で正当化しても、借金があること自体にストレスを感じるなら、それは返すべきかもしれません。自由とは、数字上の最適解だけでなく、「心の平穏」も含めて最大化されるものだからです。
私の場合は、以下の条件を満たしているため、天秤が「運用」に大きく傾いています。
- 住宅ローン残高以上の金融資産を保有していること(実質無借金状態)
- 配当金で、月々の返済が自動的に賄えていること
「返そうと思えば明日でも完済できる。でも、運用したほうが人生が面白くなるから、あえて返さない」。この主導権を自分が握っている感覚が、私にとっての「ふわふわした自由」の正体です。
まとめ: 住宅ローンは、個人が人生で唯一利用できる「超低金利・超長期のレバレッジ」です。これを単なる重荷と捉えるか、自由への踏み台と捉えるか。 2050年という遠い完済日を、私は「リスク」ではなく「30年間の複利のチャンス」として楽しみに待つことにしています。


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